水戸地方裁判所 昭和46年(ワ)31号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕そこで、すすんで、被告等の時効の仮定抗弁について判断する。
原告が石崎病院より強制入院を解除された昭和三六年二月六日当時原告が不法行為に基く損害および加害者を知つていたことは当事者間に争いがない。
原告は準禁治産宣告を受けていたところ、保佐人の同意を得られなかつたので、本件不法行為に基く賠償賠償請求訴訟を提起することができず、昭和四六年二月四日に至りようやく保佐人の同意を得て本訴を提起するに至つたので、原告の被告等に対する損害賠償債権の消滅時効は保佐人の同意を得た右昭和四六年二月四日より進行すべきものであると主張するが、およそ消滅時効制度の存在理由は権利不行使の状態が一定期間継続したという客観的な事実を尊重してこれにより財産上の権利消滅の効果を生ぜしめ、もつて社会の法律関係の安定に資するにあることはいうをまたないところであり、殊に不法行為に基く損害賠償債権についてはこれに加えて証拠保全の困難を救済する必要から三年という短期の消滅時効にかからしめていることもまた多言を要しないところである。しかして、右消滅時効は民法七二四条の定める時点よりその進行を開始し権利不行使の事実状態が三年間に亘り客観的に継続した場合には消滅時効は当然に完成するのであり、右権利行使につき債権者側に事実上の障害が存在したとしても、右消滅時効の進行開始には何等影響がないものというべきである。
これを本件についてみるに、原告が準禁治産宣告を受け、保佐人の同意を得られなかつたがために被告等に対し不法行為に基く損害賠償請求の訴を提起することができず、昭和四六年二月三日に至り、保佐人より本訴提起の同意を得たことは、<証拠>によつて認められるところであるが、右の如き事情は債権者たる原告側に存する主観的かつ事実上の障害にすぎないものであるから、何等消滅時効の進行開始に影響を及ぼすものではない。
従つて、原告の損害賠償債権は原告が不法行為による損害および加害者を知つた昭和三六年二月六日より三年を経過した昭和三九年二月六日の終了をもつて時効により消滅したものというべく、被告等の時効の仮定抗弁はその理由がある。
(太田昭雄)